本日とっておきの1冊をご紹介いただくのは
学芸大学にある本屋さん、
SUNNY BOY BOOKSの店主、高橋さん。
5坪ほどの店内には様々なジャンルの本が並びます。
大きい本屋さんには売っていないようなジンも充実していて
新たな出会いがお店のそこかしこに潜んでいます。
実は足を踏み入れると空間が広がって
目に見えている以上の広さになっているんじゃないかと錯覚するくらいの充実した時間が過ごせます。
店主の高橋さんは飄々とした顔でしらんぷりしてるけど、そんな魔法が使えそうな(実際使っていると思う)
ワクワクする本屋さんなのです。
そんな高橋さんが本棚から取り出した1冊はこちらです。
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シュトルム『みずうみ 他4篇』(岩波文庫)
ドイツ文学に詩的リアリズムの風を吹き込んだといわれ、
今でも根強いファンの多い小説家テオドール・シュトルムの代表作。
「眼もとどかぬほど遥かな最後の湖上に、広葉につつまれて一つさびしく白い睡蓮が浮んでいた。」(本文より)
物語は月明かりの下で、ある老人が若かりし頃の恋愛を回想するところから始まります。
実らない初恋のお話といってしまえばそれまでですが、そのことを知っていても本書の世界を十分に堪能できます。
“一篇の詩、掴むことのできない睡蓮、湖畔の散歩道、夕暮れのベンチ・・・”
描かれるひとつひとつの風景が時の流れの中ですれ違った男女の心情と見事に繋がっていくからです。
美しい思い出の中に生きていた青年がイムメン湖の自然に触れるなかで、2人の戻らない時間を受け入れていくーー
その抒情的表現に、青春の恋を通して描かれる微妙な世界の見え方、心の流れに共感する方も多いと思います。
秋風吹く自然の中で読みたい、ちょっと切ない物語。ぜひページを開いてみてください。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------(文・高橋)
そんなサニーボーイブックスでは現在
イラストレーター箕輪麻紀子さんのイラスト展「Float」が開催中。
芸術の秋、アートに触れてみませんか。
イベント詳細はこちら▼
http://www.sunnyboybooks.jp/event/makiko-minowa-float/