APT # 207 おうちにこもるweek企画
「冬に読みたいオススメの本」
2015.11.07
No.7
一年ののち / フランソワーズ・サガン
recommender : humar. 黒野真吾(デザイナー)
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
”いつかあなたはあの男を愛さなくなるだろう”とベルナールは静かに言った、
"そして、いつかぼくもまたあなたを愛さなくなるだろう"
『われわれはまたもや孤独になる、それでも同じことなのだ。そこに、
また流れ去った一年の月日があるだけなのだ.....』
"ええ、わかってるわ"とジョゼが言った。
原題「DANS UN MOIS, DANS UN AN(1ヶ月後、1年後と訳すのでしょうか.....)」
冬に読みたい本ということで、急に寒くなってきた最近、
前々から読んでみたかったけれど読めていなかった本を読みました。
無駄がなく淡々と綴られていく情景描写はハレーションをおこしてしまった写真のような透明感と、
美しいのだけど手に取れないような世界感、それでいてどこか空虚さが漂う物語。
登場人物たちの恋愛を描いているのに、感情移入することはなく、
ただ文字を目で追い、それを俯瞰しているような感覚でした。
日々いろんなことが起こるのだけれど、もうその時間にはもどることはできない、
時間が経って、一周ぐるりと回ってまた同じところに戻ってきてしまった、
でも何かを失ってしまっている。
パリの美しい街並や、ゴダールの映画に出てきそうな男と女のやりとりを想像しながらも、
その中になぜか頭の中にチラチラと浮かぶ日本の和室ときらきら光る犬吠埼の海岸と魚の塩焼き。
この小説をテーマにした映画「ジョゼと虎と魚たち」のシーンが入り込んできます。
そうなると頭のなかはもう大変で、
パリのコンコルド広場から、いきなり虎のいる動物園の情景に飛ばされてしまったりするわけで。
本質的ではないのかもしれませんが、そんな頭の中のいったりきたりがよくわからず新鮮で、
映画と合わせて読んでみるのも面白いと思います。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
recommender profile
パリ留学後、深澤直人の下で働く。
今年独立、graphic design,art direction,product designなど
幅広く素敵なデザインを生み出す巨匠。
APT # 207のHP、ロゴ、目隠し文庫のデザインなどをお願いしました。
何か依頼をすると、要望以上のものを返してくれる
とても信頼出来るデザイナー。