APT # 207 おうちにこもるweek企画
「冬に読みたいオススメの本」
2015.11.15 sun
No.13
山のパンセ / 串田孫一
recommender : 井上香織 (日本茶インストラクター / オトナのおやつ会講師)
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私は本好きだけど基本、「手元に残したい本」しか買いません。
そうして自分の元へ来た本たちを、繰り返し繰り返し、暗記するほど読み尽くす。
今回本を紹介していただいた井上さんも同じだそう。
この本も、古本で買ったのもあるんだけれど、何度もページを繰ったであろういい感じの使い込み感がありました。
なぜ冬のオススメにこの本を?
「この本はいつの季節のことも書いてあるんだけれど、
1番季節が厳しくて、かつ想像がつかないのが"山の冬"だと思います。
それが印象深くて。」
著者の串田さんは、詩人であり哲学者でもある。
パンセとは瞑想録のことで、山登りのことと古い記録を蘇らせて描いた文をまとめたのがこの本です。
自然の静かな力を感じつつ、抗うことなく楽しんでいるような
美しい文章を書かれるのだそう。
1番好きなところは?と聞くと、
迷わず「不安の夜」と返ってきました。
"不安の夜"は、当時中学2年生だった息子さんを真冬の穂高の山に送り出した時のことを描いた章。
息子が心配でラジオをつけたり、新聞の天気図を見たり...
微妙な心の揺れが綴られています。
「1年間だけですが北海道に住んでいたことがあって。
冬の厳しさを少しだけ知っている身として、
自然の厳しさ、山の厳しさというものを少しだけ想像しやすいのではないかと思います。」
「冬は植物にとってぐっと栄養を貯める大事な時期。
そして春が来たらぐわっと成長し、花開くでしょう。
人も、栄養を蓄える時期なんだと思います。」
井上さんのお話を聞いていると、
人も植物も自然の中のひとつなんだと改めて思います。
お茶は植物であり、四季によって味や種類が違います。
それによって淹れ方、楽しみ方も違います。
「お茶を学び出したからって言うわけじゃないけど、
やはり自然に、季節や植物に眼がいくようにはなりましたね」
自然に寄り添って生きることの大切さを、
お茶を通して無意識に感じ取っているような井上さん。
「冬はこういう本を読んで、心も身体もゆっくり栄養を与える時期にしてください。」
冬はよく、悩んでいる時や辛い時の比喩なんかにも使われますが、
無理しなくて良いんだよ、のメッセージにも聞こえます。
山のパンセは短い文章がたくさん入ったエッセイ集。
無理せずちょっとずつ、綺麗な文章をこころに蓄えていってください。
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オトナのおやつ会の様子はこちら▼
recommender profile
井上香織
日本茶インストラクター、APT # 207主催のイベント『オトナのおやつ会』講師。
お茶を極めるならと、着付けやお菓子の資格まで取るほど(和菓子製造の資格有)。
"お茶の美味しさ"を伝え、"お茶を身近に"することに尽力を尽くしている。